ぶらり歩き

12. 川越七福神巡り                                     平成20年5月17日

 ゴールデンウィークは初夏を思わせる暑い日の連続であったが、その後は4月初めの気温に逆戻りしてしまった。何やら不順な天候の夏を迎えるのかと心配していたが、今日は気温も20度を越えて再び初夏のような爽やかなウォーキング日和となった。
 大学時代の友人3名と東武東上線の川越駅で待ち合わせて、川越七福神めぐりを中心に川越の町を散策した。

 そもそも七福神はインドの大黒天(だいこくてん)毘沙門天(びしゃもんてん)弁才天(べんざいてん)、中国の布袋尊(ほていそん)福禄寿神(ふくろくじゅ)寿老人(じゅろうじん)、そして日本の土着信仰の恵比寿天(えびすてん)の神仏混交した、国際色豊かな日本的な信仰で、その起源は室町時代末期頃と言われている。こんな破天荒なことは一神教の世界ではあり得ない発想であるが、外来物を自然体で取り入れて独自の文化に昇華させる日本人独特な才能といえる。もちろん、現在の日本人も七福神を受けいていて、毎年12月の暮れ近くになると、テレビコマーシャルに登場し、正月は更に活躍させらることになる。

 まずは川越駅にもっとも近いところにある、毘沙門天を祀った妙善寺(写真1)を訪ねる。毘沙門天を見ることはできなかったが、境内には平成7年に建立された川越さつまいも地蔵尊(写真2)が祀られている。川越といえばサツマイモが頭に浮かぶが、その歴史は江戸時代に遡る。青木昆陽が栽培法を確立してから16年後の享保20年(1735年)に川越でサツマイモの栽培が開始された。そして、寛政年間(1789年〜1800年)に江戸では焼き芋屋が現れ、川越のサツマイモは質がよく重用される。元々焼き芋屋は宝永(1704年〜1710年)頃に京都で始まり、焼き芋は栗にやや味が及ばないとして「八里半」という看板を掲げたという。天保年間(1830年〜1844年)になると、江戸でサツマイモといえば、川越と言われるようになり、ブランド品として定着したようである。そのときに、京都の「八里半」に引っ掛けて、川越が江戸から十三里の距離にあることから、「栗よりうまい十三里」といわれるようになったという。現在、川越市は10月13日をさつまのもの日に制定している。

 次に訪ねた天然寺(写真3、てんねんじ)では、境内の小さなお堂に寿老人が祭られている。11〜12世紀の造立と言われる木造大日如来坐像を本尊とする本堂の傍に、平成5年に建立された、釈迦如来を中心にして如来、菩薩、明王など十三の仏像(写真4)が祀られている。天然寺は川越駅に比べて一段下がった国道16号線に面して建っており、次に訪ねる喜多院へは坂道を登っていく。その上りきったところで、最近ではあまり見かけなくなった麦畑(写真5)を目にする。トウモロコシなどの穀物が世界的に高騰しているご時世を思い浮かべると、国産の食料を供給するこのような畑や田んぼについて考えさせられる。

 天長7年(830年)に慈覚大師(794年〜864年)によって喜多院と同じく創立された天台宗の中院(なかいん)、日光、久能山とともに三大東照宮といわれている仙波(せんば)東照宮を見物する。中院の庭に植えられた樹木は手入れが行届き、休憩用の椅子に座って眺めるだけで、心を和やかにしてくれる。東照宮の壕にかかった石橋を渡るときに友人の前を蛇が横切り、悲鳴ともつかぬ驚きの声が響き渡る。

 
大黒天が祀られている喜多院(写真6)を訪れる参拝人は途絶えることがない。慶長4年(1599年)に天海僧正(1536?〜1643年)が住職となり、徳川家康の信任を得ることとなり、慶長17年(1612年)に喜多院と称するようになる。

写真1 妙善寺(毘沙門天) 写真2 妙善寺・川越さつまいも地蔵尊 写真3 天然寺(寿老人)



写真4 天然寺・十三仏像 写真5 麦畑 写真6 喜多院(大黒天)


 今年が開創150周年という成田山別院(写真7)に向かうころから雨が降り始め、自然と急ぎ足での七福神めぐりとなる。成田山は護摩が有名であるが、別院本堂の左手前には不動明王像が建っている。

 熊野神社で足ツボを刺激するという石敷きを痛さを堪えながら裸足で歩き、大正浪漫夢通りを抜けて、傘をさして
福禄寿神蓮馨寺(れんけいじ)(写真8)弁財天妙昌寺(みょうしょうじ)(写真9)、新河岸川の高見橋のたもとに建つ布袋尊見立寺(けんりゅうじ)(写真10)を訪ねる。見立寺の境内には、徳本上人名号塔(写真11)が建っている。この名号塔は徳本上人が亡くなる1年前に川越に布教にきたときのものだという。説明板によると、名号塔に刻まれた徳本の落款には、「鬼くだく 心を丸く 田の中に 南無阿弥陀仏と 月のおもかげ」という意味が含まれているとのことであるが、わかるような気がする。

 菓子屋横丁から蔵の建ち並ぶ中央通りに出て、川越の象徴である時の鐘(写真12)を訪ねる。時の鐘の櫓を潜ると、薬師神社の狭い境内となるが、眼病にご利益があるといわれており、眼病平癒を祈願する
絵馬が数多く奉納されている。 

写真7 成田山別院(恵比須天) 写真8 蓮馨寺(福禄寿神) 写真9 妙昌寺(弁財天)
 
 写真10 見立寺(布袋尊) 写真11 見立寺・徳本名号塔  写真12 時の鐘
   
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